9Gビザとは、フィリピンで働くための就労ビザ
9Gビザとは、フィリピン国内の会社に雇用されて働く外国人のための就労ビザです。正式には Pre-arranged Employment Visa と呼ばれ、フィリピンで給与や報酬を得て働く場合に使われる代表的なビザです。
セブで現地企業に就職する人、日系企業のフィリピン法人で働く人、語学学校やBPO企業、不動産会社、IT企業などで雇用される人が対象になります。
一方で、9Gビザは「セブに住みたいから個人で申請するビザ」ではありません。基本的には、フィリピン側の雇用主がスポンサーとなり、会社と本人が必要書類をそろえて申請するビザです。
そのため、9Gビザを考えるときは、まず「どの会社に雇用されるのか」「その会社が外国人雇用の手続きに対応できるのか」を確認することが重要です。
9Gビザが必要になるケース
9Gビザが必要になるのは、フィリピン国内で合法的に雇用され、継続的に働く場合です。
たとえば、次のようなケースです。
- セブの現地法人に正社員として雇用される
- 日系企業のフィリピン支社で働く
- 語学学校や教育機関でマネージャー、講師、スタッフとして働く
- BPO、IT、不動産、観光、医療関連企業などで就労する
- フィリピン法人から給与を受け取る
- 外国人として専門職や管理職ポジションに就く
フィリピンで働く場合、単に観光ビザで滞在しているだけでは原則として就労できません。短期の出張や一時的な業務であれば別の許可が使われることもありますが、現地企業に雇用されて継続的に働く場合は、9Gビザが基本的な選択肢になります。
9Gビザ取得の全体像
9Gビザの取得は、本人だけで完結する手続きではありません。通常は、雇用主であるフィリピン法人が主導して進めます。
大きな流れは次の通りです。
- フィリピンの会社から雇用オファーを受ける
- 雇用契約書や職務内容を準備する
- DOLEでAEPを申請する
- Bureau of Immigrationで9Gビザを申請する
- 必要に応じてヒアリングを受ける
- 承認後、パスポートにビザを実装する
- ACR I-Cardを取得する
フィリピン移民局は、9Gビザについて、フィリピンで賃金・給与・その他報酬を得て合法的な職業に従事する外国人が対象であると説明しています。また、申請場所はBI本局または対応可能な移民局オフィスとされています。
まず必要になるAEPとは
9Gビザを理解するうえで欠かせないのが、AEPです。
AEPとは Alien Employment Permit の略で、外国人がフィリピンで働くために必要となる労働許可です。9Gビザは移民局の手続きですが、AEPは労働雇用省であるDOLE側の手続きです。
簡単にいうと、AEPは「この外国人をこの会社がこの職種で雇用してよいか」を確認するための許可です。9Gビザは「その外国人がフィリピンに滞在しながら働くためのビザ」です。
つまり、9Gビザだけを見ていても不十分です。実務上は、AEPと9Gビザをセットで考える必要があります。
特に近年は、外国人雇用に関する審査が以前より慎重になっています。会社側がきちんと書類を準備できるか、職務内容に合理性があるか、外国人を雇う必要性を説明できるかが重要になります。
9Gビザ取得までの流れ
1. 雇用主を決める
最初のステップは、フィリピン側の雇用主を決めることです。
9Gビザは、特定の会社に雇用されることを前提としたビザです。そのため、本人が自由に「9Gビザだけ」を取得することはできません。
雇用主となる会社は、フィリピンで正式に登録された法人である必要があります。会社側は、SEC登録書類、事業許可、税務関連書類、雇用契約書、職務内容などを準備することになります。
この段階で確認すべきことは、会社が外国人雇用の手続きに慣れているかどうかです。セブの日系企業や外資系企業の中には9Gビザの手続きに慣れている会社もありますが、小規模企業の場合、手続きに時間がかかることがあります。
2. 雇用契約と職務内容を整理する
次に、雇用契約書や職務内容を整理します。
9Gビザでは、本人がどの会社で、どのようなポジションで、どのような業務を行うのかが重要です。単に「スタッフ」「マネージャー」と書くだけでは不十分な場合があります。
特に外国人を雇用する理由が説明できる職種であることが大切です。
たとえば、日本人顧客対応、日本市場向け営業、日本語を使うカスタマーサポート、海外事業開発、専門技術、管理職などは、外国人雇用の必要性を説明しやすいケースがあります。
一方で、フィリピン人でも十分に対応できる一般的な業務だけの場合、審査上の説明が難しくなる可能性があります。
3. AEPを申請する
雇用主は、DOLEにAEPを申請します。
AEP申請では、会社情報、本人情報、職務内容、雇用契約、外国人を雇用する理由などを提出します。必要に応じて、求人や公告に関する手続きが求められることもあります。
AEPは、9Gビザ申請の前提になる重要な書類です。AEPがなければ、9Gビザ申請を進められない、または審査が止まる可能性があります。
この段階で時間がかかることが多いため、就労開始日から逆算して早めに準備することが重要です。
4. 9Gビザを移民局に申請する
AEPの準備が進んだら、フィリピン移民局に9Gビザを申請します。
移民局の公式手続きでは、申請書類の事前確認、手数料の支払い、領収書の提出、ヒアリング、写真・指紋登録、承認状況の確認、承認後のパスポート提出、ACR I-Cardの取得という流れが案内されています。
申請は、BI本局または対応可能な移民局オフィスで行われます。セブに住んでいる場合でも、案件によってはマニラ側で処理されることがあります。会社や代行業者がどこで申請するのかを事前に確認しておくと安心です。
5. 必要に応じてヒアリングを受ける
9Gビザ申請では、本人がヒアリングに出席する場合があります。
ヒアリングでは、雇用先、職務内容、フィリピンでの滞在目的、経歴などを確認されることがあります。通常は過度に難しいものではありませんが、申請内容と本人の説明が一致していることが重要です。
会社の役職、業務内容、勤務地、給与、雇用期間などを自分でも把握しておきましょう。
6. 承認後、パスポートにビザを実装する
9Gビザが承認されると、パスポートを提出してビザの実装手続きを行います。
この段階で、パスポートにビザ情報が反映され、正式に9Gビザ保持者として扱われます。
ただし、承認されたからといってすべてが終わりではありません。ACR I-Cardの取得も必要です。
7. ACR I-Cardを取得する
ACR I-Cardとは、フィリピンに一定期間滞在する外国人に発行される外国人登録証です。
9Gビザ保持者は、ビザとあわせてACR I-Cardを取得します。移民局の手続きでも、写真・指紋登録を行い、ACR I-Card申請を進める流れが案内されています。
ACR I-Cardは、銀行手続き、各種登録、身分証明などで使う場面があります。パスポートと同じく、大切に保管しましょう。
9Gビザ申請で必要になる主な書類
9Gビザの必要書類は、申請者本人、雇用主、申請場所、職種、家族帯同の有無によって変わります。
ただし、一般的には次のような書類が必要になります。
本人側の書類
本人側で準備する主な書類は次の通りです。
- パスポート
- パスポート顔写真ページのコピー
- 証明写真
- 申請書
- 履歴書または職務経歴書
- 雇用契約書
- 職務内容を示す書類
- 学歴や資格を示す書類
- 警察証明または無犯罪証明
- 健康診断書
- 現在のビザ・滞在資格を示す書類
- ACR I-Card関連書類
- 家族帯同の場合は婚姻証明書や出生証明書
日本で9Gビザの発給を受ける場合、在東京フィリピン大使館は、パスポート、申請書、写真、雇用主からの推薦状、日本の警察証明、健康診断書などを基本要件として案内しています。また、DFA Manilaからの権限通知を受けた後に発給できるとされています。
会社側の書類
会社側で準備する主な書類は次の通りです。
- 会社登録書類
- SEC登録証明
- Articles of Incorporation / By-Laws
- Mayor's Permit
- BIR関連書類
- 会社のGIS
- 雇用契約書
- 会社からの申請レター
- 外国人従業員とフィリピン人従業員の人数証明
- 職務内容説明書
- AEP関連書類
- 会社代表者の身分証明書
- 必要に応じた取締役会決議書
移民局の9Gビザ案内でも、必要書類チェックリスト、申請書、子どもに関する追加情報、外国人・フィリピン人従業員数の公証済み証明書などが案内されています。
日本から申請する場合とフィリピン国内で切り替える場合
9Gビザには、大きく分けて2つの進め方があります。
ひとつは、日本など国外で9Gビザを発給してもらってからフィリピンに入国する方法です。もうひとつは、フィリピンに入国後、現在の滞在資格から9Gビザへ切り替える方法です。
日本で発給を受ける場合、フィリピン側の会社がまず移民局に申請し、承認後にDFAを通じて在外公館へ通知が送られ、その後本人が大使館で手続きを行う流れになります。在東京フィリピン大使館も、雇用主がフィリピン移民局に申請し、承認後にDFAから大使館へ権限が送られる流れを説明しています。
一方、フィリピン国内で切り替える場合は、すでにフィリピンに滞在している状態から移民局で9Gビザへの変更手続きを進めます。
どちらがよいかは、雇用主、本人の現在地、就労開始時期、会社の手続き方針によって変わります。
セブで9Gビザを取るときの注意点
セブで9Gビザを取る場合、まず確認すべきなのは、雇用主が手続きをどこまで対応してくれるかです。
会社によっては、社内のHRがすべて対応してくれる場合もあります。一方で、外部のビザ代行業者や法律事務所を使うケースもあります。
本人としては、次の点を確認しておくと安心です。
- AEP申請は会社が行うのか
- 9Gビザ申請は会社が行うのか
- 費用は会社負担か本人負担か
- 家族帯同の手続きに対応してくれるか
- 申請中に働き始められるのか
- パスポートを預ける期間はどれくらいか
- 更新手続きは誰が管理するのか
- 退職時のビザダウングレードは誰が行うのか
特に重要なのは、退職時の扱いです。9Gビザは、特定の雇用主に紐づいたビザです。その会社を退職した場合、そのまま同じ9Gビザで滞在し続けられるわけではありません。
退職、契約終了、転職の際には、ビザのダウングレードや新しい雇用主での手続きが必要になることがあります。
家族を帯同できるか
9Gビザでは、配偶者や扶養家族を帯同できる場合があります。
フィリピン移民局は、9Gビザの主たる保持者または申請者の配偶者と、21歳未満で未婚の扶養子女について、扶養家族として含める手続きを案内しています。
家族を帯同する場合は、婚姻証明書、出生証明書、翻訳、認証、アポスティーユなどが必要になることがあります。日本の戸籍謄本を使う場合も、英訳や認証の扱いを事前に確認しておきましょう。
セブに家族で移住する場合、本人の9Gビザだけでなく、配偶者や子どもの滞在資格も同時に計画することが大切です。
9Gビザの有効期間と更新
9Gビザの有効期間は、雇用契約や申請内容によって変わります。一般的には1年、2年、3年などの期間で発給されることがあります。
移民局の手数料表でも、9Gビザについて1年、2年、3年の区分が示されています。ただし、移民局の公式ページ上の手数料は変更される可能性があるため、実際の申請時には最新金額を確認する必要があります。
更新時には、引き続き同じ会社で働いていること、AEPが有効であること、会社側の書類が整っていることが重要です。
更新を忘れると、オーバーステイや罰金、将来のビザ申請への影響が出る可能性があります。会社任せにしすぎず、自分でも有効期限を管理しておきましょう。
9Gビザ申請でよくあるトラブル
9Gビザ申請でよくあるトラブルは、書類不備とスケジュールの見込み違いです。
たとえば、次のような問題が起こりやすいです。
- 雇用契約書の内容が不十分
- 職務内容があいまい
- 会社側の登録書類が古い
- AEPの申請が遅れている
- 本人の証明書類の取得に時間がかかる
- パスポートの有効期限が短い
- 家族書類の認証に時間がかかる
- 申請中にビザ期限が迫ってしまう
- 退職時のダウングレードを忘れる
特に日本の警察証明や健康診断書、戸籍関連書類は、すぐに準備できない場合があります。海外で使う書類は、英訳、認証、アポスティーユが必要になることもあるため、早めに確認しましょう。
9Gビザと観光ビザの違い
観光ビザは、観光、短期滞在、商談、視察などを目的とする滞在資格です。原則として、フィリピン国内で雇用されて働くためのビザではありません。
一方、9Gビザは、フィリピン国内の雇用主のもとで働くことを前提とした就労ビザです。
セブに長期滞在している日本人の中には、観光ビザを延長しながら滞在している人もいます。しかし、現地企業から給与を受け取って働く場合は、観光ビザのままでよいとは考えない方が安全です。
「住んでいる」ことと「働いている」ことは、ビザ上は別の問題です。セブで仕事をする場合は、自分の働き方に合ったビザや許可を確認しましょう。
9Gビザとリモートワークの関係
近年は、セブに住みながら日本企業や海外企業の仕事をリモートで行う人も増えています。
この場合、9Gビザが必ず必要になるとは限りません。9Gビザは、フィリピン国内の会社に雇用され、フィリピンで就労するためのビザだからです。
ただし、リモートワークの扱いは、収入源、雇用主の所在地、滞在期間、フィリピン国内での営業活動の有無などによって判断が変わる可能性があります。
日本企業から給与を受け取りながらセブに滞在する場合、9Gビザではなく、観光ビザ、長期滞在ビザ、その他の滞在資格を検討することになります。
一方で、フィリピン法人に雇用される場合や、フィリピン国内で営業・管理・雇用関係が発生する場合は、9Gビザや関連許可が必要になる可能性があります。
リモートワーカーの場合は、「フィリピンで働く」の意味があいまいになりやすいため、ビザ専門家や会社側のHRに確認することをおすすめします。
9Gビザ取得前に確認すべきチェックリスト
9Gビザを申請する前に、次の項目を確認しておきましょう。
- フィリピン側の雇用主は正式に登録された会社か
- 雇用契約書は用意されているか
- 職務内容は明確か
- 外国人を雇用する理由を説明できるか
- AEP申請の担当者は決まっているか
- 9Gビザ申請の担当者は決まっているか
- 費用負担は会社か本人か
- 家族帯同の有無を会社に伝えているか
- パスポートの有効期限は十分か
- 日本で取得すべき書類があるか
- 申請中の滞在資格に問題はないか
- 退職時のビザ処理について確認しているか
このチェックリストを事前に確認しておくだけで、申請中のトラブルをかなり減らせます。
セブ就職・移住で9Gビザを考える人への現実的なアドバイス
セブで働くことを考えている人にとって、9Gビザは非常に重要な手続きです。
ただし、9Gビザは「取りたい人が自由に取るビザ」ではありません。雇用主があり、その会社が外国人を雇用する合理的な理由を示し、必要書類をそろえて初めて進められるビザです。
そのため、セブで就職や転職を考える場合は、給与や仕事内容だけでなく、その会社が9Gビザに対応できるかを必ず確認しましょう。
特に家族でセブに移住する場合、本人の就労ビザだけでなく、配偶者や子どもの滞在資格、学校、医療保険、住居契約まで一体で考える必要があります。
9Gビザは、セブで安定して働き、生活基盤を作るための重要な土台です。手続きはやや複雑ですが、会社と本人が早めに準備すれば、合法的に働きながらセブで生活する道が見えてきます。
まとめ
9Gビザは、フィリピンで雇用されて働く外国人のための代表的な就労ビザです。
取得には、フィリピン側の雇用主、AEP、移民局での9Gビザ申請、ACR I-Card取得など、複数の手続きが関係します。
本人だけで進めるものではなく、雇用主の協力が不可欠です。特にセブで働く場合は、会社が外国人雇用に慣れているか、AEPと9Gビザの手続きをどこまでサポートしてくれるかを事前に確認することが大切です。
また、9Gビザは雇用主に紐づくビザです。退職や転職の際には、ビザのダウングレードや新しい申請が必要になることがあります。
セブで長く働く予定がある人は、就職先を決める段階からビザ手続きを意識し、必要書類を早めに準備しておきましょう。
